映画『工作 黒金星と呼ばれた男』を見て昔の知人を思い出した話

映画『工作 黒金星と呼ばれた男』の試写を見てきた。

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1990年代の韓国を描いたという意味で、私のストライクゾーンど真ん中の作品ではあるけれど、ストーリーがほとんど北京で展開するので、さほど懐かしさは感じなかった。

1997年の大統領選のときは大邱で仕事していて、あんな熱狂はなかったこととか、仕事で大失敗した思い出が蘇った。何よりも平壌の場面はとてもよく再現されていて、仕事で訪ねたときの重苦しい気分が蘇って、なんだか胸や胃が痛くなった。

昔よくお酒を飲んだ外交官

政権交代して安企部の情報員が「私はなんのために工作員になったんだ」と自問する場面がラスト付近で出てくる。この場面を見て、昔よくお酒を一緒に飲んだ国情院出身の外交官を思い出した。

彼とは歌舞伎町の韓国バーで偶然出会い、名刺を交換した。東京の韓国大使館に勤める国家情報院出身の外交官だった。その直後に大阪に転勤したのだけど、偶然、彼も大阪総領事館に転勤してきた。大阪の仕事はあまり忙しくなかったようで、私はときどき呼び出されては、酒に付き合った。

一言で言うと、国家情報院というスパイ組織出身らしからぬ、抜けた人だった。

目つきが悪いけどやたらめったら愛想がいいのは、公安組織によくあるタイプだが、飲んだ後はかなりの確率で酔っ払って我を失い、私が芦屋の自宅まで送り届けた。大阪には北朝鮮と深いつながりのある在日コリアンも多かったが、そういう人との飲み会にやってきて、お互いの体制を血相を変えてけなしあい、最後はぐでぐでになって床に倒れてしまった。

あるとき、私と2人で深夜まで飲みながら、彼は自分の生い立ちについて語り出した。

光州出身で、1980年の光州事件のときはソウルで学生運動をしていたこと。安企部に就職したことで、兄弟からなかば縁を切られたこと。

1990年代前半の南北高位級接触で、相手をした北朝鮮の官僚から、ホテルの部屋にあった果物を「君が食べなさい」と渡され、逆に北朝鮮の厳しい食糧事情を垣間見たこと。

金大中政権になって北朝鮮は壊滅させる敵から交流相手になり「自分のやってきたことはなんだったのかと思った」とアイデンティティークライシスになったこと。それでも公務員として「太陽政策は支持している」こと。

べろべろに酔っ払って、彼は私に「俺の正体はなんだと思う?」と聞いてきた。何を今更、と思い「そうですね、情報員かもね」と言うと、彼は「情報員さ」と答えた。そんなことはずっと前から知っているのだが、その日も結局、正体を失い、芦屋までタクシーに乗せた。

その後、離任あいさつの電話とともに、彼はソウルに戻り、連絡は途絶えた。国情院出身の外交官は、偽名で活動することが多い。おそらく私がもらった名刺も本名ではない。ソウルで探そうとしても、名前が変わっているだろう。でも、もう一度ぐらい、一緒に酒を飲んでみたい。


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 (映画『工作 黒金星と呼ばれた男』|ニュースde韓国語|noteに加筆しました)

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