#38 SMエンターテインメントに一体何が? HYBEとカカオが株式の争奪戦

対訳

BTSの所属事務所・HYBEが、大手K-POP芸能事務所・SMエンターテインメントを電撃買収した。HYBEはSMの大株主イ・スマン氏が保有する株式の持ち分のうち14.8%を4228億ウォンで買収し、2月10日に公示した。SMの最大の株主であるイ・スマン氏の持ち分は18.46%で、HYBEは今回の取引で一気に筆頭株主に上り詰めた。

그룹 방탄소년단(BTS)의 소속사 하이브가 대형 K팝 기획사 SM엔터테인먼트를 전격 인수했다. 하이브는 이수만 SM 대주주가 보유한 지분 14.8%를 4228억원에 인수한다고 10일 공시했다. SM 1대 주주인 이수만의 지분율은 18.46%로, 하이브는 이번 거래로 단숨에 최대 주주에 등극한다.

カカオ・エンターテインメントが2月7日に9.05%を確保する第三者割当(有償)増資を骨子としてSMと手を結んだが、HYBEがイ・スマン氏と手を組んで一気にこれを制しにかかった。

카카오가 지난 7일 9.05%를 확보하는 유상증자를 골자로 SM과 손을 잡았지만, 하이브가 이수만과 손을 잡고 단숨에 이를 제치고 나선 것이다.

https://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20230210500021

イ・スマン氏は2010年に役員を退いてから、公式に経営からは手を引いており、賃金も受け取っていなかった。自信の妻の甥であるイ・ソンス現共同代表と、マネージャー出身で長いこと一緒に仕事をしてきたタク・ヨンジュン共同代表を通じて、間接的に影響を及ぼしてきた。

이수만은 지난 2010년 등기이사에서 물러난 뒤 공식적으로 경영에서는 손을 뗐고 임금도 받지 않아 왔다. 자신의 처조카인 이성수 현 공동대표이사와 매니저 출신으로 오랜 기간 호흡한 탁영준 공동대표이사를 통해 간접적으로 영향을 끼쳐 왔다.

しかし昨年、行動主義ファンド「アライン」の推す監査役が選任され、最近は社外取締役を過半数にするよう取締役会の改編方針が決められ、影響力を失った。プロデューシング改編案を含んだ「SM3.0」発表で、コンテンツ制作からも手を引くことになった。

그러나 지난해 행동주의펀드 얼라인 측 감사가 선임되고 최근 사외이사를 과반으로 두도록 이사회 개편 방침이 정해지면서 영향력을 상실했다. 프로듀싱 개편안을 담은 ‘SM 3.0’ 발표로 콘텐츠 제작에서도 손을 떼게 됐다.

https://www.yna.co.kr/view/AKR20230210051600005

これに対し、海外に滞在していたイ・スマン氏は7日に急きょ帰国し、SMを相手に第三者割当増資(新株発行)と転換社債発行を禁止するよう仮処分申請をソウル東部地裁に起こした。HYBEは経営権の安定的な確保のため、少額株主の株式買収にも乗り出す方針だ。カカオは追加の株式買収の計画はないと明らかにしたが、方針が変わる可能性もある。業界では、3月に予定されている株主総会で経営権をめぐる争いが繰り広げられると予想している。

이에 해외에 머물던 이수만은 지난 7일 급거 귀국했고, SM을 상대로 제3자 신주 및 전환사채 발행을 금지해 달라는 가처분 신청을 서울동부지법에 냈다. 하이브는 경영권이 안정적인 확보를 위해, 소액주주의 주식 매입에도 나설 방침이다. 카카오는 추가적인 주식 매입 계획이 없다고 밝혔지만, 입장이 달라질 수도 있다. 업계에선 오는 3월 예정된 주주총회에서 경영권을 둔 싸움이 벌어질 것으로 예상한다.

https://www.segye.com/newsView/20230210510082

ちょっと(ではないかも)解説

連日、韓国の経済ニュースを賑わせている大手芸能事務所・SMエンターテインメント(以下、SM)の株式買収問題。日本でも人気のアーティストを多く抱える2大事務所が合併? と関心は高そうですが、背景が複雑なので何が起きたのかよく分からない方も多いかもしれません。

ここで紹介した記事を読んでも、何のことやら、さっぱり分かりません。どのメディアも分かるように書いてくれませんが、実はSMという会社の根本に関わる構造的な問題が発端です。

現状は、SMの創業者で大物プロデューサーのイ・スマン氏がHYBEに助けを求めた「イ・スマン+HYBE」連合と、イ・スマン氏の影響力排除を狙う「SM現経営陣+カカオ+物言う株主」連合が、SMの経営権を巡って株の争奪戦をしているという構図になります。

イ・スマン氏は言わずと知れたSMの創業者でカリスマ的プロデューサーです。2010年に表向き経営から手を引いたとは言え、SM株の18.46%を保有する筆頭株主で、現在も多大な影響力を持っています。

しかしイ・スマン氏も御年70歳、「自身の持つSM株を売却するのではないか」とささやかれてきました。そして一気にほころびが出たのが昨年のこと。これも株式が発端でした。

SMの不透明な内部取引

記事の中で「賃金も受け取っていなかった」とありますが、実はSMのグループ内には「ライク企画」という、イ・スマン氏が100%株を持つ子会社があり、プロデュース業の印税などの名目で、SMから多額のお金を受け取っていました。ただ、「SMの(利益ではなく)売上高の6%」という、SMの業績に関係なく支払われる仕組みだったため、会社経営として見れば、本来は株主に還元されるべき利益が、イ・スマン氏に不当に高い報酬として支払われていることになります。これは上場企業であるSMの株価が、他の同規模の芸能事務所に比べて相対的に低くなっている一因とされてきました。

これに公然と異議を唱えたのが、「行動主義ファンド」アライン・パートナーズ(Align Partners)という、日本で言う「物言う株主」ファンドです。アラインのSM株の持ち分は全体の約1%に過ぎませんでしたが、「不当な支配構造が企業価値を低下させ、株主の利益を損ねている」として経営の透明化を主張、賛同する株主を募りました。イ・スマン氏にとっては不利な主張になりますが、商法の規定により、イ・スマン氏はこうした監査に関する議決では3%分の議決権しか行使できないため、アラインの推す監査役が多くの株主の賛同を得て選任されました。

イ・スマン氏に反旗を翻した現SM経営陣

2月3日、SMの両共同代表は、今後の長期ビジョンとなる「SM3.0」を発表し、HYBEのようなマルチレーベル体制への移行を核とするグループの変革を宣言しました。ここでは前年に契約を打ち切った「ライク企画」、つまりイ・スマン氏とのプロデュース契約の終了も宣言されており、イ・スマン氏個人の影響力を大幅にそぐ狙いもあったとみられています。これは実は、イ・スマン氏に一言の相談もなく決められたと報じられています。

2月7日、かねてからSMの経営参画に意欲を示していると言われていたカカオ・エンターテインメントが、SMの9.05%の株式を取得すると発表。これは現有株式の譲渡ではなく、第三者割当増資や転換社債による新株発行という形で行われました。これを決めたのは現経営陣です。現在の共同代表はイ・スマン氏の妻の甥と、長年イ・スマン氏とともに仕事をしてきた元マネージャーですが、明白にイ・スマン氏に反旗を翻し、SMへの影響力を排除しようと狙ったことが分かります。大量の新株発行で、カカオをイ・スマン氏に継ぐ第2位の株主にするだけでなく、イ・スマン氏の株式保有率も相対的に下げることになるからです。

イ・スマンの反撃…頼ったのはHYBE

これに驚いたイ・スマン氏は滞在中の海外から帰国し、SMを相手に第三者割当増資と転換社債発行を禁止するよう仮処分申請をソウル東部地裁に起こすと同時に、HYBEのパン・シヒョク会長に助けを求めます。HYBEは2月10日、イ・スマン氏から株式の譲渡を受けてSMの筆頭株主になりましたが、イ・スマン氏は引き続き約3%のSM株を保有しているところをみると、SMから完全に手を引く考えはないとみられます。

SMの従業員の多くはライバルでもあったHYBEの経営参画で、イ・スマン氏が経営に復帰することや、企業カラーが変わることを危惧しているとみられています。匿名のネット調査では85%がHYBEの買収を支持せず、HYBE側が従業員向けの説明会で「イ・スマン氏の経営復帰はない」と説明したとも報じられました

今後はどうなる?

状況は流動的です。3月にSMの株主総会が開かれ、現在の両共同代表の任期も終了します。HYBEはTOB(株式公開買い付け)で保有株式のさらなる積み増しを表明しています。このままHYBEの思惑通りに進めば、「イ・スマン+HYBE」連合に有利とみられます。ただ、カカオと現経営陣がこのまま黙っているとも思えず、何らかの反撃に出る可能性があります。

上場企業のSMは、株式の約6割を個人など小規模の株主が保有しています。HYBEのTOBはこの少額株主に呼びかけられていますが、「不公正な支配構造のせいで、株価が不当に低く評価されている」というファンドの主張が、少額株主の多くに支持されてきた経緯もあります。どちらに支持が流れるかは、まったく読めません。

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