#M06 映画「ワイルド・シング」に登場する往年のK-POP、まつもとたくおさんと考察してみた

ポッドキャスト「ニュースで韓国語」、今回はニュースをお休みして、映画「ワイルド・シング」に出てくる往年のK-POPについて、音楽ライターのまつもとたくおさんと考察するエピソードをお送りします。

「ワイルド・シングはどんな映画?」

 舞台は2001年、ヒップホップダンスに青春を燃やす19歳のダンスマシンDM(カン・ドンウォン)が、怪しい事務所の社長にスカウトされて、男女混合3人のダンス、ラップ、歌のグループ「トライアングル」としてデビューします。またたく間に歌謡番組で1位を取って大人気になります。

 2ndアルバムも1位に輝きますが、様々な問題に巻き込まれ、グループは解散、消えていくのもあっという間でした。


 それから20年後、40代になったトライアングルに、イベント限定で再結成の話が持ち上がり、3人は「もう1回舞台に立ってスポットライトを浴びたいんだ!」と奮起しますが、様々な問題が持ち上がり…。

  人気個性派俳優オ・ジョンセが演じたのは、トライアングルと歌謡番組の1位を争うライバルのバラード歌手、チェ・ソンゴン。ロン毛に白ずくめの衣装、ツルツルお肌という出で立ちで、「君が好き」(니가 좋아)を歌うオ・ジョンセの鬼気迫る?演技が受けたのか、韓国ではこの歌がミーム化して大流行。李在明大統領もサムスンの会長と面会したときにこの歌を被せたショート動画を流すほどでした。


 その一方で興行成績は今ひとつ。観客動員135万人と、収益分岐点とされる200万人を下回ってしまいました。劇場公開から2カ月で、Netflixで公開されています。

舞台設定は2000年代、音楽は1990年代?

 映画では、主人公たちが結成する3人組グループ「トライアングル」の曲など、映画の舞台となる2000年代前半の音楽シーンを再現してMVまで制作してしまうこだわりようでした。

 一方で、ポッドキャストの2人は「再現されている音楽シーンは、実は90年代なのではないか?」と考察しています。

トライアングルのアメリカンカジュアル

 トライアングルの3人はアメリカンフットボールのユニフォーム風の衣装を来ています。アメリカンカジュアルをまとって韓国の歌謡界に旋風を巻き起こしたのは、1992年デビューの「ソテジワアイドゥル」でした。

 ダボダボのTシャツに破れたジーンズ、値札がついたままの野球帽といった3人組のファッションと音楽は、韓国の歌謡界に革命を起こしたと言われるほどの衝撃でした。この大ヒットに触発され、アメカジ、ヒップホップ風のグループが多数デビューします。
 そのうちの一つ、ZAMは、男女混成でストリートダンスの要素を取り入れた、トライアングルと共通点の多いグループです。

 今見ると「ZOO」にも似ていますね…

チェ・ソンゴンのモデルは?

 「バラードの貴公子」と言えば、思いつくのが1990~2000年代に圧倒的な人気を誇ったシン・スンフン。映画「猟奇的な彼女」のテーマソング「I Believe」は、映画の冒頭でもタイトルだけコールされています。


 一方、まつもとさんによれば、チェ・ソンゴンのコスチュームや「君が好き」の歌は、90年代の人気歌手イ・スンファンの「3つの願い」(’세가지 소원’)がモデルではないかとのこと。

 チェ・ソンゴンのビジュアルは、やはり90年代後半から2000年代にかけてバラードが人気だったロック歌手、キム・ギョンホのヘアスタイルを拝借しているとみられます。確かに似ています。

「盗作騒ぎ」と言えば「お祭り忍者」

 デビュー作が大ヒットし、2作目も歌謡番組で1位に輝いたトライアングル。しかし2作目がブルガリアの曲の盗作だと報じられ、グループは壊滅の危機に。
 このエピソードで思い出すのは、1995年、韓国で盗作疑惑が初めて大々的に社会問題になった「お祭り忍者」騒動。
 1995年、大人気だった男女混成レゲエ・ヒップホップ歌謡グループ「Roo’Ra」の新曲「天上有愛」が、日本の「お祭り忍者」に酷似しているという内容でした。


 Roo’Raは当時、2ndアルバムが大ヒットして人気絶頂、満を持して出した3rdアルバムも当初は大人気でした。しかし、盗作疑惑が大手メディアで報じられると一転して非難が殺到し、歌謡番組にも出演できなくなる事態に。
 それまでも、主にアメリカや日本の曲を拝借した歌謡曲は多数あったものの、テレビや新聞のニュースになってテレビ出演が見送られる事態になったのは異例でした。当時人気だったパソコン通信やインターネットの登場で、情報のスピードが速くなったことも影響しているのかもしれません。

 「お祭り忍者」騒動で文字通り天上から地に堕ちたRoo’Raですが、翌1996年に新アルバムを発表。「3!4!」が大ヒットします。どん底からの再出発という、自身の境遇にも重なる歌詞の内容が、多くの人々の共感を呼びました。

謎のアルゼンチン人が口ずさむ曲?

 ネタバレになるので詳しくは控えますが、映画に登場する謎のアルゼンチン人が、ある場面で突然口にする韓国語。なぜ「カナダラマバサ」なのでしょう? しかも、ちょっと歌っているようにも聞こえます。
 これを見てピンときたのが、1990年代前半の人気歌手ヤン・ジュニルのヒット曲。タイトルはまさに「カナダラマバサ」です。

 ヤン・ジュニルは韓国系アメリカ人で、単身で来韓して歌手活動をしていました。韓国語が不自由だったのに、誰も手伝ってくれなかったので独力で作詞していたといいます。
 韓国歌謡界にR&Bの風を吹き込んだ第一世代の一人で「Rebecca」などヒット曲を連発しましたが、ある日突然、芸能界から消えてしまいました。2019年に韓国で番組出演した本人の話によると、入管職員の嫌がらせでビザが更新できず、帰国を余儀なくされたとのことです。

#096-3 韓国芸能界から突然消えたヤン・ジュニル、再び脚光
時代の先を行った天才、タプコル公園のG-DRAGONと呼ばれた歌手ヤン・ジュニルが、突然、大衆の前から消えた残念な理由が明らかになった。시대를 앞서간 천재, 탑골공원 지드래곤이라고 불린 가수 양준일이 갑자기 대중들 앞에서 사라진 …

まとめ

 いかがでしたでしょうか。K-POPが世界的な人気になる直前の音楽シーンを描いているので、馴染みがない方も多いかもしれませんが、今のK-POPシーンの源流とも言える曲ばかりです。背景を知ればより、映画を楽しめると思います。

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