映画『月はどっちに出ている』に描かれた在日コリアンと祖国の関係

Podcast「ニュースde韓国語」の#NDK071で、映画「月はどっちに出ている」について話した。

1994年に公開されたこの映画、在日コリアンの生き様を軽妙に、これまでにない斬新な視点で描いたとして、当時はとても注目された。在日コリアンでもある崔洋一監督の出世作でもある。

あらすじは別のサイトに譲るとして、ここでは、気になっていた映画の中のメタファーと思われる部分について。

映画の端役に、新人タクシー運転手の安保さんという人が出てくる。スマホもカーナビもなかった時代、不器用な安保さんが道に迷い、タクシー会社に「私はどこにいるのでしょう。どうやって帰ればいいのでしょう」と電話をかける場面が、3回出てくる。

麿赤兒演じる強面のタクシー会社の社長は、

1回目:「月はどっちに出ていますか。そちらの方向を目指して走りなさい」

2回目:「近くに何が見えますか。金のウンコを目指して走りなさい」(注:浅草のスーパードライホールにあるモニュメント)

3回目:無言でガチャ切り。

シリアスな場面で軽いギャグをアクセントに挟んでいるように見えて、実はこのやり取りが、在日の置かれた位置を表しているという説がある。

1~3回目のやりとりは、それぞれ在日1~3世と祖国との関係。すなわち、安保さんが在日で、麿赤兒が祖国。

1世に対し、祖国が指示する「月」とは、遠くにある美しい理想。それを追い求めれば帰ってこられる。

2世に対し、祖国が指示するものは、もう少し具体的で卑近なものになる。

3世になると、もう祖国は一方的に関係を断ち切っている。

私は映画を見た後に、大学時代に交友のあった在日コリアンの友人からこの話を聞かされ、「そんな解釈もできるのか」と驚いた。

そうこうしているうちに時は流れ、在日は4、5世の時代になった。スマホやカーナビが発達した時代、安保さんは本社に電話をかけて道を尋ねることがあるだろうか。麿赤兒はそのとき、なんと答えるのだろう。


月はどっちに出ている [ 岸谷五朗 ]

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